復活した国鉄急行型気動車キハ58系!思い出の高山本線からいすみ鉄道での奇跡の復活まで。

十数年まで、ローカル線に転用されながらもあれほどたくさん走っていたキハ58系。それがついに2011年3月のダイヤ改正で定期運用から撤退、事実上の全廃になった。以前執筆した「489系ボンネット特急はくたか号(ボンたか)の旅」で訪れた富山は、実はキハ58系に乗るための目的地であった。これが本当の―――そう覚悟して乗ったはずのキハ58系、なんと2013年、千葉県のいすみ鉄道で奇跡の復活を遂げた。この記事では、2010年現役当時の姿、奇跡の復活を果たしたいすみ鉄道での活躍(2013年)を織りまぜて、お届けする。

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2010年8月。思いがけない幸運によりめぐり合ったボンネット489系はくたか号を富山駅で見送ったあと、僕は新幹線開通に向けて姿を変えようとする富山駅を歩いた。新しい時代に向けて、解体途中の構造物は半ば廃墟のようである。

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越中八尾と富山の間を朝夕往復しているキハ58系は、国鉄色とオリジナルカラーの二種類だ。どちらに会えるかは運次第だったけど、幻のボンネットはくたか号に続き、国鉄急行色の車両がホームで出発を待っていた。今日は本当に、恐ろしいほどついている。

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エクステリアを観察する。前面部は古臭い国鉄顔(褒め言葉)が懐かしい。いかにもアナログの時代を感じさせる無骨なジャンパ線がいい。側面部はさっきの古臭さとは打って変わって洗練された印象を受ける。きっとそれはスマートな一段上昇窓と、ボディに隠された雨樋、車両最端部にキチッと設置された細いドアによるものじゃないだろうか。優等列車にふさわしい、上質なデザインの処理がなされている。それでは、早速中に入ってみよう。

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キハ58系のドアは、車内の冷房効果を高めるため「手動」になっていた。ごつい形状の取手を開けると、独特の国鉄型の香りが漂ってくる。デッキはモスグリーンの色がよりレトロな雰囲気を増幅させる。車内がオリジナルと異なる点は、ローカル輸送用に転用された際に車端部のシートがロングシート化されたことだが、あとは国鉄急行形の雰囲気そのもの。僕は席について、窓を少しだけあけて、往年の雰囲気を楽しむことにした。

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発車時刻になり、エンジン音を鳴り響かせならゆっくりと、スムーズに加速していく。すでに夕刻。赤、緑、黄色、たくさんの光が夕焼けの富山の街を照らしている。刻々と変化する景色の中、何十年も変わらずに日本を駆けた名車が、終焉の少しずつ向かっていることを実感した。ディーゼルの香り、レールの音、心地良い風を楽しむのもつかの間、約30分で、終着駅の越中八尾に到着した。ここでしばらく停車したのち、富山に折り返したあと、キハ58の一日が終わるのだ。青春18きっぷのシーズンということもあり、半分くらいの乗客は鉄道ファンである。当然、復路もこのキハ58に乗車する。

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もうあたりは真っ暗になったあと、キハ58は再度富山に向かって発車する。キハ58系には、「立席」にもおすすめのスポットがある。デッキには小さな窓がついており、そこを開けると風の影響をあまり受けずに走行音を楽しむことができる。走行音を録音する趣味の方には、もってこいのスポットである。短いスプリントのあと、富山駅へ。予想外の489系のめぐり合わせで、カメラのバッテリーを予定以上に消費してしまい、電源はもう切れる寸前だ。

富山駅で乗客を降ろすと、キハは車内の照明を消す。こうして見てみると、かなりボディは傷んでいる。写真のキハ28 2360は1964年製。ということはもう47年も前の車両ということになる。よく、ここまで生き残ってくれたなと思う。

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跨線橋を上り、今日一日の仕事を終えたキハを見送ろうと思った。そして、ついに回送のシーン。エンジンがうなると、やわらかい白い煙が漆黒の夜の空にふわっと浮かび上がる。想像をはるかに超える幻想的な景色だ。2両は軽やかなエンジン音を奏でながらゆっくりと仲間の待つ車両基地へと帰って行った。そして僕にとっても、とても充実した一日が終わった。

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その後、この2両はダイヤ改正後に廃車となり、解体された。だがしかし、2012年に驚くべきニュースが飛び込んできた。なんと、千葉県のいすみ鉄道に、1両だけ廃車を免れたキハ28 2346が、イベント用として転属するという、まるで夢のような奇跡の復活劇が起こったのだった。すでにいすみ鉄道が導入していたキハ52と2両編成で「急行列車」として運転を始める。当然、行く以外なかった。

2013年4月。東京から車を飛ばして大多喜駅へと向かった。急行列車は大原駅から発車するが、早朝送り込みとして同じ編成を使った快速列車が大喜多から発車する。公営の駐車場に車を置き、大多喜駅へと向かうと・・・いた!キハ52と28が、ピカピカの状態で車庫に入っている!もう一生乗ることはないだろうと思っていた2両に、今日はこれに乗ることができるのだ。実はキハ28への乗車には通常指定席券が必要だが、こちらは快速列車なので不要である。大多喜駅ではヘッドマークの取り付け作業を見ることができる。JRではヘッドマークどころか、その種別さえも見なくなった急行の文字が誇らしい。

準備が整うとホームに入線する。キハ52を先頭にポイントの向こうまで走り、その後キハ28を先頭に折り返して入線する。撮影するにはなかなかいいシーンかもしれない。

ホームに入線したあと、数分の停車を経て列車は発車する。僕は迷わず、キハ28のボックスシートに陣取った。

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車内はほとんどJR西日本時代のまま。いすみ鉄道ではあえて余計な手は加えず、そのままにしているらしい。懐かしい3年前の高山本線の旅が、千葉の地でもう一度味わえるなんて、夢のようだ。

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早朝だが土日ということで、乗客はかなりのもの。沿線では多くのファンがカメラを抱えてキハ28/52に熱い視線をおくっている。きっとこの2両は、のどかな田園地帯をバックに最高によく映えるのだろう。

急行とは言っても、走行速度は実にまったりとしたもの。かつては東北本線のまっすぐのびたレールを設計速度の上限でぶっ飛ばすキハ58の快速も痛快だったけれど、それとはまた違う魅力がある。時代がもっとゆっくりと流れていた頃の日本が楽しめるのだ。

終着駅までの30分弱は実に早く過ぎ去る。あっという間に大原に到着した。今度はキハ52を先頭に、「急行」として折り返し運転が行われる。今度はキハ52に乗車することにした。さきほどの乗客も一度降りて、駅の売店で「急行券」を購入する。

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かなりの人出だ。ちょっと前までは連日閑古鳥、存続の危機に瀕していたいすみ鉄道だったが、起死回生を図るべく社長を公募。そこで航空会社出身で自身も鉄道ファンの敏腕社長が経営改革と様々なマーケティングを行い次第に経営が安定。今ではその魅力の虜になったファンが関東各地からこぞってやってくるという、非常におもしろい鉄道会社。こうした稀少価値の高い古い国鉄型気動車を集めて、しかも実際に走らせているのは、社長自身の鉄道に対する愛なのだと思う。部品の調達が非常に困難になっているということだが、これからもずっと、地域の観光資源として走らせてほしい。

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急行の一番列車ということで、さきほどとは比べものにならないほどの多くの人が乗車してきた。しかも、いすみ市ではその日「みんなでしあわせになるまつり in 夷隅」という、昭和の車を集めて展示するというイベントを行っていたので、なおさらである。新幹線が無かった頃の急行列車は、きっとこういう賑やかさだったのだろう。列車が発車すると、ガイドが列車の紹介や地域の魅力を解説してくれる。僕は車を止めた大多喜駅まで戻ることにした。途中、今日のイベントで特別にやってきたボンネットバスが、踏切の前で停車して、みんながこちらに手をふっている。昭和好きのためのファンサービスだ。国吉駅でしばらく停車するが、そこでも今日のために集まった旧車たちがお出迎えしてくれる。この貴重なワーゲンバスは社長の私物なんだとか。しかも、驚いたことに久留里線を引退したはずのキハ30が留置されている!調べてみると、引退後に購入して整備した後、キハ25/52/30を3両つなげて走らせるプランがあるらしい!なんてファン思いの会社なのだろう。

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大多喜駅に戻り、列車を降りる。わずかな間だったが、昭和を満喫することができた旅だった。今度は終点まで行って、上総中野から小湊線で気動車を乗り継いでみたい。そうすれば、もっと昭和の旅を楽しめるだろう。近くの踏切で、キハの通過を見守る。絶滅するかに思われていた国鉄の名車は、ここに安息の地を見つけた。これからも愛されながら、走り続けてほしい。


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国鉄型HD について

国鉄型をこよなく愛する自由人。小型カメラを片手に日本全国どこへでも。

投稿日: 8月 25, 2013 | カテゴリー: 国鉄型乗り鉄記 | パーマリンク コメントする.

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